東京電力の有価証券報告書(12/3期)を見て

2012年6月29日に行われた、首相官邸前の大飯原発再稼働反対を訴える大規模なデモ。旅行に行っている間にFBのウォールに、そのデモを上空から写した写真を見て、衝撃を受けた。後日、そのデモに友人が参加したという話も耳にした。

原発がないにこしたことはないのだけれど、自分の態度を明確に打ち出すことができない。3.12に、インターネットを通じて見た1号機の爆発の恐怖、放射線の恐ろしさをボクはまだ分かっていないということなのだろうか。

原発そのものの話ではないが、去年の震災で被災した福島第一原発保有する東京電力有価証券報告書を見てみた。

tokyoele.
有報の分析メモ

財務数値に対する震災の影響

連結売上高は11/3期、12/3期と5兆円程度で推移している。その一方で、営業利益は4,000億円(11/3期)から、△2,700億円(12/3期)の赤字に転落し、また、11/3期には1兆円、12/3期には3兆円程度の震災に伴う特別損失を計上した。
一方、BSを見てみると、総資産は14兆円〜15兆円で推移し、その半分は電気事業関連資産(7兆円程度)であり、当該資産を社債/銀行借入で調達している財務構造になっている。また、震災の影響による業績悪化に起因し、12/3期の純資産(8,000億円程度)の総資産比率が5%程度と、前期(11%)と比して悪化している。

東京電力の事業性の不思議

12/3期は福島原発が被災し、柏崎原発も定期点検を行う影響で、全ての原発を停止した状況だった。(全期間かは不明)そのため、火力発電に対する依存が高まった影響で12/3期は営業赤字に転落したとのことである。原発が火力より経済効率性がよいと読み取ることができそうだが、実はそんな単純な話ではない。
というのも、今回の震災で計上した11/3期と12/3期の特別損失(1兆円、3兆円)および今後、追加で発生する可能性のある訴訟費用等も原発の運営コストに含まれるべきものと考えることができる。なお、2期で計上した特別損失4兆円という数字は、震災前の11/3期の純資産3兆円を吹き飛ばす金額である。
この状況を鑑みると、電力事業というのは、実は震災前から経済的にも成り立っていなかったと考えるのは言い過ぎだろうか。
※12/3期の特損3兆円は特別利益「原子力損害賠償支援機構資金交付金」2兆円でカバーされるのかもしれないが、詳細はぼくが分かっていないです。

東京電力とエネルギーの今後

震災の影響により、火力依存の高まりと原発賠償のダブルパンチによる業績悪化を受けて、債務超過の危険性(12/3期の純資産8,000億円、当期純損失8,000億円)があるかもしれない。一方、今後のエネルギー政策のシナリオとして、原発の経済性も、安全性もあまりよろしくない今、火力に依存しながら、自然エネルギーへの移行というのが、一番に想像される。その時に気になるが、以下の点ではないだろうか。

  • 火力の環境への影響(CO2等)と事業効率の悪さ
  • 自然エネルギー発電の実現可能性(有報によると、東京電力の発電出力の1%も満たない。)
  • 東京電力の財務状況はこれに持ちこたえられるのか

わからないことだらけではありますが、ちょっと考えてみました。